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アノミー(倫理崩壊)と世相分析

 昨日(10/31)から今日にかけてテレビや新聞、ネットでは下記の犯罪について事実だけを並べて報道している。
容疑者「女性殺害、ばれると思い彼氏も」 座間9人遺体
 神奈川県座間市のアパートで9人の切断された遺体が見つかった事件で、9人のうち2人は恋人同士で、死体遺棄容疑で逮捕された無職の白石隆浩容疑者(27)が「彼女を殺した後、警察にばれると思い、彼氏も殺した」と話していることが、捜査関係者への取材でわかった。警視庁はこの男女が事件の最初の被害者とみている。(朝日新聞デジタル)

これが客観的報道というものだろうが、このような事件が起こる原因は何か、何事も原因があって結果があるとすれば、その原因を深く分析する必要があると思う上から、「アノミー現象」として最も客観的に分析した小室直樹氏(故人・万能の学者として著書多数)の論文を紹介したい。原因を解明しない限り、同じような事件を解決することができるはずはない。

*アノミーとは何か

 小室氏の著書のキーワードは「アノミー」の一言にある。もともとアノミーという用語は、フランスのエミール・ディルケーム(1858~1917)によって社会学に適用された。ディルケームの代表作には「自殺論」がある。
 アノミーの意味をネットで調べると、
「アノミー (anomie) は、社会秩序が乱れ、混乱した状態にあることを指す「アノモス(anomos)」を語源とし、宗教学において使用されていたが、デュルケームが初めて社会学にこの言葉を用いたことにより一般化した。デュルケームはこれを近代社会の病理とみなした。社会の規制や規則が緩んだ状態においては、個人が必ずしも自由になるとは限らず、かえって不安定な状況に陥ることを指す。規制や規則が緩むことは、必ずしも社会にとってよいことではないと言える」
「アノミー」は次のように分類される。
(単純アノミー)急激な生活環境の変化や新旧規範の葛藤による不安と混乱の状態。
 かつての阪神大震災のような場合、人間の側に責任のない自然災害が原因であり、価値観や規範が急変し喪失したのではない故に、被害者に心理的な混乱はなかった。むしろ平穏であるべき自然の変動に対して「ボランティア元年」といわれるような連帯感による奉仕活動が生まれた。アノミーとは、あくまで無規範や無秩序という心理状態に関わる現象に限られている。
(急性アノミー)信じ切っていた権威が急に失墜して裏切られた時の心理的パニック。社会全体の中心にあって秩序を保っていた規範の解体によって広がる混乱と不安。敗戦後の天皇の人間宣言もその一つ。敗戦後の日本は臨床心理学者の河合隼雄氏が「中空構造」と呼んだように、国民全体に共通の精神的中心を失ってしまった。
(原子アノミー)すべての規範が分散・断片化し、常識が失われ、個人が孤立する。その結末は自殺願望か破壊衝動か、いずれかに走る。無差別殺人や幼児虐待にエスカレートする場合もある。
 このように断片化した規範が複合した社会では、同時に年齢や職業による断層化と疎外感が深まっていく。その結果、自分個人にしか通用しない理由によって欲望を満足させようとする事件が多発する。これは、文字通り「孤立アノミー現象」と呼ぶ他はない。その事例は、秋葉原事件をはじめとして枚挙にいとまがない。こうした反社会的犯罪の多発化によって、社会の秩序が乱れる危険が増大していく。
 特に「単純アノミー」や「急性アノミー」が同時に複合すれば、社会不安や混乱に陥りかねない。
(構造アノミー)独自の宗教的信念を中心とする集団(宗教的共同体)が、その反社会的構造から発生する社会との断絶によって危険に陥る状態。さらに内と外の二重規範が形成され、建前と本音の乖離と矛盾によってついには破綻に至る。
 戦後の恐るべき事例として、オウム真理教による地下鉄サリン事件がある。今さら申すまでもなく、教団内部では殺人が救済の手段と信じられていた。殺人という極端な場合は別としても、金銭や性や暴力などが内部の規範と信じられる場合もあり得る。
 構造的アノミーに陥った組織では、成員の関心は内部に集中し、内部だけに通用する慣例、規範、規律などが神聖視され、一切の批判を受けつけず、無条件の遵守を求められる。
 以上の状況は、かつての軍国主義日本帝国においても典型的に実現されていた。すなわち天皇を神人とする国家神道を国教として、八紘一宇(天皇の権威を八方に拡大して世界を統一する)幻想を全国民に信じさせ、戦争によって実現しようとした。その幻想を少しでも批判する者は国賊と呼ばれ、不敬罪に問われ、弾圧・投獄された。
 構造的アノミーの恐ろしさは、個人による殺人事件と異なって、戦場では数万数十万単位で敵味方による正義の殺人が行われることにある。

*傍観者の視点を超えて

 上述した単純アノミーの原因として、急激な生活環境の変化や新旧規範の葛藤による不安と混乱が指摘された。この状態は、たしかに現代の日本社会においても見受けられる。その具体的な状況としては、戦後の核家族化に伴う高齢者との別居による子育ての知恵と経験の喪失がある。とすれば、何らかの手段によって両親に育児のノウハウを伝える方法があれば、未然に問題を解決できるのではないか。
 じつは育児放棄や幼児虐待は日本ばかりでなく、欧米でも拡大して社会問題となり、事件が起こってからではなく未然に防止すれば社会的損失は大幅に縮小されることが分かっている。そのため、あらゆる統計や実験を重ねた結果、虐待防止プログラムが完成しているという。日本でも虐待防止のために「コモンセンス・ペアレンティング」訳せば「子育ての常識」を教育し実践するセミナーが各地で開かれている。
 以下、社会福祉講座を受講する機会に講義を受けた「虐待防止プログラム」の実践活動を紹介したい。講師の堀健一氏は、社会福祉施設で虐待された子どもらの世話と防止の指導をしているプロで、アメリカでも実地に経験と学習を積み重ねてきたと自己紹介があった。
 じつは、多発する育児放棄や幼児虐待のニュースを聞くたびに私は、義理の親子関係や個人的な性格の欠陥によるのではないかと憶測していた。たしかに親が自分から解決しようとする意欲と目的があれば、情報はいくらでも用意されている。とはいえ、身近に育児の経験者がいないことが事件の一因になることは否定できない。
 
 家庭教育の重要性を説く講師は断言する。核家庭で赤ん坊を初産して母親になっても、育児の仕方を書いた説明書が添付されているわけではない。今やまともに子育てできる親は一〇%以下しかいない。全くシツケの仕方を知らない家庭が山ほどある。無知ほど恐ろしいものはない。その結果、幼児が親の言うことを聞かず、親の思い通りにならないと、ののしるか放置するか、どちらかしか方法はない。さらに幼児が言うことを聞かない態度が繰り返されエスカレートした結果が、虐待となり育児放棄となる。初めからすき好んでそんな行動をとる親は滅多にいない。
 
 ここでこれ以上、虐待防止プログラムの実際を勉強するわけにはいかないので、子育て支援の要点だけ紹介しておきたい。但し、知識として知っていることと実行できることとは違うので、講習ではトレーニングが重視される。
 しつけの仕方は、子どもを「褒める」ことが先で、8対2の割合で「叱る」のがベスト。叱る場合、具体的に言わないと子どもは理解できない。
 あいまいな言葉を使って注意しても、子どもの身になれば、何のことか理解できず、言うことを聞きようがない。したがって、子どもでも理解できるように具体的に表現する必要がある。例えば、上は× → 下が◯
 ちゃんとしなさい→こんにちはと挨拶するのよ
 いらんことしないで→椅子を蹴るのはやめてね
 しっかりしなさい→家まで自分で歩けるでしょう
 親は感情的にならないよう気を鎮める訓練を積み重ねる必要がある。落ち着けば解決する。講習では落着きかたの練習もプログラムに入っている。
 要するに「子育ての常識」を身につけるのが目的で、何も難しい問題はない。アメリカでは防止のために払う一ドルは、実際に虐待が起こってから必要となる一〇〇ドル一〇〇〇ドルに相当すると言われている。幼児期に虐待を受けて成人した親は、こんどは自分が子どもに虐待を繰り返すことになる。
 里親を対象とする講習を受講してトレーナーの資格を取得して活動すれば、親子の救済につながることは間違いないだろう。
 
 社会にせよ集団にせよ、最高で完全な規範は「天の理」にある。とくに人体ほど完璧な組織システムはない。組織の内外が二重規範になることなく、天の理に適った規範をモデルとして世の中に映していくことこそが天然自然の順序に違いない。
 組織内部も世の中も、自然の秩序に反する複合的な構造的アノミー状態では、前途は共倒れする以外にないと言わざるを得ない。
(追 記)
 この章のテーマに関連して、このブログに投稿している岡潔博士:幼児の情緒教育に関するファイルを再読してくださることをお勧めしたい。

追 記=カッコ内は筆者による補足)
●生前の対談の中で小室直樹氏は、質問に答えて次のように発言している。
「ずばり結論言いますと、よく近代国家のエレメントとして、司法、立法、行政という三権のチェックス・アンド・バランスがあげられますね。ところが今の日本では、それ全部を役人が簒奪(横取り)しているんですね。行政府はもちろん、立法権って言ったって議員立法なんか実質的にできないです。法律もみんな役人が作ってる。検事も裁判官もみんな役人でしょ。要するに役人が三権を簒奪している。仮に三権を一人で持っているのが主権者だとする。やっぱり一番主権者に近いっていうのは役人。」

●これからの近未来の日本がどうなるか、との質問に答えて、
「ものすごいアナキー(無政府的)な状態になる。アナキーな時代=戦国時代、明治維新、両方ともものすごい混乱、ものすごいアナーキーですよね。そこから新しいものが出てくるわけです。だから悪いとは限りませんね。でも悪い側面もたくさんある。安定はなくなる。」
 HP『マジメな話』=岡田斗司夫 世紀末・対談の内より転写


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万年哲学者(Always Philosopher)

Author:万年哲学者(Always Philosopher)
 "万年哲学者" を自任する80代が半世紀かけて解明した"いのち" の真実を、若者たちに伝えるために発信するブログです。"真実" とは100年経っても価値を失わない発見や表現を意味しています。

 25年前の1991年には日本情報処理開発協会主催公募エッセイ「私たちのくらしと情報化」が最優秀賞を受賞したことがあります。(ブログ内で原文をリンク)情報を心の栄養とみて健全な知情意を育成するために必要な情報論を展開し、その後の急激な情報化の潮流に対して問題点を先取りした内容と自負しています。

 戦後70年にあたる2015年8月、ボランティアで続けてきたHP<戦争を語りつぐ証言集>(http://www.geocities.jo/shougen60/) が延べアクセス23万回となり毎日新聞でも紹介されました。戦争やテロほど生命を破壊する所業はありません。

 今後は "超人類" へ飛躍する未来をひらく「生命の哲学」に関連ある情報を提供したいと願っています。

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